モロッコとチュニジア。ともにアフリカ大陸の最北地、イスラム教の国、フランスの影響を受けたアラブ文化、サハラ砂漠に面しているなど、共通点の多い2か国。
モロッコとチュニジアの両方が気になるけれど、「旅行先としてどちらが面白いか?」「どちらを先に行くべきか?」迷うことはないでしょうか?
この記事では、「モロッコとチュニジアの違いや良さがわからない」というかたへ向けて、両国を訪問した経験から、それぞれの特徴と良し悪しを紹介します。
目次
モロッコとチュニジアの共通点と違い
モロッコ、チュニジアともに、旅行先としてはとても良い国で、自信をもっておすすめすることができます。
カルチャーショック(日本との文化風習のギャップ)もありますし、「最果ての異国の世界に来た」と強く思わせてくれるはずです。
イスラム教の国のおもしろさにハマって、モロッコとチュニジアの両方へ行く人も多いようです。
共通点
両国とも同じイスラム教が国で、戒律が比較的にソフト、ゆるめという点では共通しています。
ともにフランスの植民地だった時代があり、フランス文化の影響が濃いところ、同じ一つの国と思えないほど、気候風土や景色が変化に富んでいる点も似ています。
ラマダン明けのお祭り「イード」。お祝いのごちそう「子羊の頭の丸焼き」です。
イスラム圏共通のしきたり。
相違点
下はそれぞれの地図です。間にアルジェリアを挟んでいます。
決定的に違う点は、国の広さ。
モロッコの面積は44.6万km²。(日本37.8万km²の約1.2倍)
一方のチュニジアは16.3万km²。
モロッコの方が広大で、観光地をたくさん周るには、より多くの移動時間がかかるということですね。
チュニジアの方がコンパクトで、小さいエリアに変化に富んだ見どころが凝縮された感じです。
モロッコとチュニジアの旅行のしやすさは?
日本からのアクセス(航空便)
モロッコ、チュニジアどちらも直行便はなく、アラビア系の航空会社で中東(ドバイ、ドーハなど)乗り継ぎ。
もしくはヨーロッパ系航空会社でヨーロッパ内都市で乗り継ぎ(パリなど)です。
日本からトータルで同じくらい時間がかかりますが、中東経由の場合、モロッコの方が1~2時間ほど飛行時間は長くなります。
気候
どちらも四季があり、地域によって大きな差があります。
地中海や大西洋沿岸部
地中海や大西洋の沿岸部は、湿気があり、雨も降ります。
沿岸部は四季の移り変わりが日本に似ており、日本とあまり違和感がありません。
砂漠地帯
アフリカ大陸と言えば、その約3分の1を占めるのが、サハラ砂漠。
南北に約1,700km。日本全体の国土の約25倍くらいの広さ。世界最大の砂漠です。
モロッコ、チュニジアともに、サハラ砂漠の入口にあたります。
これらの砂漠地方は「砂漠性気候」。
とても乾燥し、朝晩と日中の気温差が激しく、日中は暑く、朝晩は気温が下がります。
砂漠地帯では、年間をとおして雨はとても少なく、あまり雨が降ることはありません。
アトラス山脈の気候
沿岸部や砂漠地方の気候は、両国ともほぼ同じですが、違いはアトラス山脈や麓の気候。
北アフリカでは「アトラス山脈」という東西に約2400km続く大きな山脈があり、モロッコとチュニジア両方にまたがっています。
チュニジアの旅行では、アトラス山脈の中に入ったり、横切ったりするすることは稀れです。
一方、モロッコでは、サハラ砂漠の地方に行く際には、必ずアトラス山脈を越えてゆきます。
アトラス山脈を越える際には、標高二千メートル以上の峠(ティシカ峠/2260m)を越えてゆきますが、秋~冬はここで雪が降ることが多々あります。
政治情勢、治安の良さ
政情面(政治的な安定性、テロの頻度)の治安については、2015年~2018年の4年間に関しては、モロッコの方が安定していると言えます。
チュニジアは2011年の「アラブの春」以降、不安定化し、2015年には大きなテロ事件もあり、2018年まで外務省から危険レベル2の「不要不急の渡航は止めてください」が出ていました。
一般犯罪については、両国とも大きな差がありませんが、モロッコの方が観光客が多い分、観光客が絡んだトラブルは多いようです。
治安や安全性は短期間に大きく変化することもあります。
モロッコ、チュニジアの治安や安全性の詳細は、よろしければ以下の記事もご覧ください。
料理のおいしさ
数百年間、両国ともアラブ民族文化の伝統を受け継いできており、近いものがあります。
ともに、海辺のシーフード、クスクス、タジン、ミントティーなどがあります。
ただ、食事に関しては筆者の印象として、モロッコが好印象です。
モロッコには「タジン」という独特の陶器の土鍋で肉や野菜を煮込んだおいしい料理があります。
ホクホクの煮込んだ羊肉や野菜がとても美味しく、種類も豊富で生活に浸透しています。
チュニジアにもタジンはありますが、もう少しシンプルで、出てくる頻度も少ないように思えます。
モロッコではもう一つ「ハリラ」というおすすめがあります。
ハリラは、トマトベースでクミンや種々の野菜を混ぜ合わせた温かいスープ。
毎朝ホテルの朝食会場にも出ているほどの定番のスープで、日本でいうお味噌汁みたいな身近な存在。
ハリラは、チュニジアでは、あまり見かけません。
チュニジアとモロッコ、観光のおもしろさはどっち?
これまでお読みいただいた方は「ほとんど一緒では?」という印象をお持ちになったかもしれません。
しかし、観光で見られるものは、結構、違いがあります。
ここではそれぞれの国でしか見られないもの、特徴的なものをご紹介します。
モロッコ観光のハイライト
カスバ(要塞風の伝統建築)
カスバとは、元々は砦(とりで)の意味。
アラブ国に独特の城塞に囲まれた居住地区や建物のことで、主に土で固めて作られています。
モロッコには約300kmも続く「カスバ街道」があり、道沿いにはバラエティ豊かな「カスバ」が見られます。
チュニジアでもカスバっぽいものは少しありますが、規模も数もモロッコには及びません。
リヤドでの宿泊が楽しめる
「リヤド」とは、古くからの邸宅を改装した造った中庭式の素敵なホテルです。
中庭の柱や庭、装飾などにイスラム・アラブの雰囲気がたっぷりで、古くからの伝統を感じることができます。
「リヤド巡りを目的」としてモロッコ旅行しても良いと思ってしまうほどです。
チュニジアにはこれにあたるものは少ないです。
メディナのスケールの大きさ、複雑さが凄い
メディナとはアラブ民族が築いた旧市街のこと。
城壁で囲まれれた地区に、住居や市場(スーク)などの生活空間がところ狭しと詰め込まれ、それらがこみ入った迷路でつながれています。
特にフェスのメディナの規模と迷路の複雑さは世界一!!すごいのです。
今も数百年前の中世アラブ世界のにおい、音、人々の活気をそのまま感じられる場所です。
メディナはチュニジアにもありますが、規模や雑多感のパワーは、フェズが№1と言えるでしょう。
砂丘の美しさ、壮大さはモロッコに軍配
両国ともにサハラ砂漠の砂丘へ行く観光があります。
しかし、砂丘の広大さ、美しさでは、モロッコのエルフードの方がすごいですね。
チュニジアでも砂丘(ドゥーズなど)がありますが、砂漠の入口のため、エルフードほどではありません。
チュニジア観光のハイライト
フレンチ・アラブ風のおしゃれ感がよい
全体として、町の雰囲気や人々の洗練された感じは、チュニジアの方が強いのでないでしょうか。
おそらく国土の半分くらいは地中海に面していて、チュニジアにはリゾート地が多いです。
大陸的なモロッコと比べて、ヨーロッパからの影響をより強く受けているように思えます。
特にチュニス、シディ・ブ・サイド、スース、ハマメット、ジェルバ島などです。
古代遺跡の数が多く、保存状態が良い
地中海の中心部に面しているという地理上の理由からも、チュニジアは数々の民族の興亡が繰り広げられた歴史舞台でした。
特に古代ローマ遺跡、フェニキア人の遺跡などが十数か所あり、その数と保存状態は圧倒的な素晴らしさです。
(モロッコで有名なローマ遺跡と言えば、ヴォルビリス1か所)
街歩きのしやすさ
チュニジアは国全体がコンパクトですが、各観光地の町もコンパクトで歩きやすいところが多いです。
メディアはほどよく迷路で、一人でも迷わずに歩けるくらいです。
自分の足で歩いてみると、その土地の生活が見えてきて、思わぬ驚きや発見があるでしょう。
先住民族ベルベル人の世界が独特
ベルベル人とは北アフリカの先住民族。
アラビア半島からアラブ人がやってくる前から、この地に住んでいたのがベルベル人です。
数百年の間にアラブ人と血も生活空間も混ざり合い、区別がつきずらくなっていますが、チュニジア南部では、昔からのベルベル人の生活様式を残しているところが残ります。
マトマタには、ベルベル人の特徴的な穴居式の住居をホテルとして利用している施設もあります。
モロッコにも地方でベルベル人の末裔はいますが、生活もほとんどアラビア人と同じ。
広く一般的なカスバ以外に、ベルベル人の特徴的なものを見ることはあまりありません。
モロッコとチュニジア まとめ
結局どちらがおすすめ?ってところですが、両方とも素晴らしくて、とてもお勧めなのです。
同じ質問を両国に行った旅行好きの知人にしてみたところ、先に訪問した国のほうが印象に強く残るからか、最初に行った国のほうを良いという人が多いようでした。
もしどちらかということでしたら、
情報量の多さ、現地体制が日本人観光客に慣れているという点から、海外旅行経験があまりない場合はモロッコ・・・
海外旅行経験がそこそこあって、旅慣れている場合、チュニジアが良いというのが筆者の個人的な意見です。
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