夏が終わると始まるカブトムシの幼虫飼育。翌年の夏に成虫として生まれるまでの間、秋から春にかけての約半年間、幼虫として育てる期間が続きます。
筆者は、成虫が産卵して孵化した後、幼虫が蛹化となり、羽化して成虫までの飼育サイクルを5回(5年間)繰り返しました。
卵がたくさん成虫に羽化したとき、半減したとき。大きな成虫のカブトムシがたくさんのとき、小さなものばかりのとき・・・。
失敗と成功を繰り返してきました。
この記事では
- はじめての幼虫をどう育てたらよいの?卵から成虫になるサイクルは?
- 一つの飼育ケースに入れる頭数は?
- 幼虫飼育のマット交換の頻度や量、水分は?
- 大きな成虫にするためにはどうしたらよい?
- ペットボトル飼育はどう?
といった疑問のヒントを紹介しています!!
なお、ここでご紹介する方法は、日本のかぶとむしです。(外国産は育て方やサイクルが異なります)
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かぶとむしの幼虫:産卵~二齢幼虫まで
カブトムシのオスとメスを捕まえ、成虫たちが亡くなる頃、土の一番下のほうにキラリと光る無数の卵。
それを見たときの感動は、忘れられないのでないでしょうか。
驚きと発見の連続が楽しい時期です。
メスが産卵している合図
メスはオスと比べて土の中にいることが好き。
日中は表に姿を見せないことも多いものですが、夜行性であるカブトムシは、夜になると食(昆虫ゼリーなどのエサ)を求めて土の上に姿を見せ始めます。
しかし、交尾を終えたメスは、数日間、ぱったりと地表に姿を見せなくなることがあります。
メスが数日間、土の下にもぐって表に出てこないときは、産卵している合図と言えます。
メスが産卵に入っている可能性が高いです。
産卵後~1か月くらい
成虫として生まれて2~3か月、夏が終わる頃に成虫は次々と亡くなってゆきます。
寿命が短く、早い場合は7月頃。
一般的には8月下旬~9月頃かと思います。(気温とか餌などの生育環境により、寿命に違いが出ます)
その頃、飼育ケースの一番下側、土が固くなっているあたりを掘り起こしてみると、1~4mm(0.1~0.4cm)くらいの白い卵の数々が見つかることがあります。
上の写真の1.0~1.5mm(0.1~0.15cm)くらいのサイズの真っ白な卵は、生まれたての卵です。
大きめ(2~4mm)で少し黄ばんでだ色の卵は、産まれてから少し時間がたっています。
もし土の下の掘り起こすときは、少しずつ丁寧に土をかき分けてゆき、卵を傷つけないように探しましょう!!
探し終えたら、成虫とは別の小さな飼育ケースに移し、土の下の方に戻してあげるのもよいと思います。
産卵後、1か月もたたないうちに、孵化(ふか)、卵から幼虫が産まれてくるのでないでしょうか。
上の写真の真ん中あたりに少し茶色くなっているのが幼虫の頭部。
小さすぎて見えない??
卵から産まれたばかりの幼虫は卵とほぼ同じサイズ。
こんなに小さいのですよね♪♪
幼虫になってから1~2週間で、下の写真くらいのサイズになります。1cm(10mm)前後くらい。
ここからは早いです。
幼虫はあっという間に2齢幼虫(2~3cm前後)、3齢幼虫(3cm以上)と大きくなってゆきます。
1~2齢幼虫は体が小さく、食べるエサ(土)の量も少ないので、飼育ケースの中の幼虫の数はさほど気にしなくてよいと思います。
一般的なカブトムシ図鑑などで、2齢とか3齢とかいう言葉が出てきます。
その幼虫が何齢幼虫かは見た目の大きさで判断するくらいで、厳密にはわかりずらいものです。
しかし実際には、それぞれの段階で「脱皮(だっぴ)」していますので、土を掘り返したときの脱皮した抜け殻で、気づくこともあります。
脱皮直後の2齢幼虫。透明感のある白い頭が1日くらい後には、頭部が茶色く変化してきます。
上の写真は1齢と2齢が混在。まだ体の色が黒っぽいのが1~2齢幼虫の特徴です。
かぶとむしの幼虫:三齢幼虫の育て方のポイント
幼虫のサイズが3~4cmくらいになり、クリーム色か白色の3齢幼虫になったら、そろそろ飼育環境に注意をし始める時期です。
生育環境が悪いと、大きな成虫に育たなかったり、成虫になる前の段階で死滅して羽化できる匹数が減ることもあります。
特に気をつけたい点は以下の2つ。
❶マットの状態(マット=土=幼虫のエサ)
❷幼虫の頭数(1つのケースに何匹入れるか)
です。
秋と春の育ちざかりのとき時期に幼虫はたくさんのマット(土)を食べ、たくさん糞(ふん)をしながら成長してゆきます。
2~3週間くらい放置すると、ケースの中はあっという間に糞だらけになる時期もあるほどです。
糞だらけの状態で放置すると、食料飢餓状態で幼虫が大きく育たないばかりか、共食い(もしくは自然消滅)も発生します。
秋(10~11月頃)と寒さが和らぐ3月~4月上旬頃の育ちざかりのときのエサ環境によって、蛹化(ようか=幼虫の次の段階)できる匹数や成虫になったきの体の大きさが変わってきます。
12~3月上旬の冬季は冬眠中で、エサを食べない期間。
育てる人間も幼虫も、ひと休みできる休憩期間です。
1つの飼育ケースに入れる幼虫の頭数が多すぎて過密状態になると、大きく育たなかったり、共食いや幼虫の自然消滅が増えてきます。
幼虫が快適に、健やかに育つには一定のスペースが必要ということですね。
マット表面に糞が見えてきたら?土の交換
3齢幼虫になった秋(10~11月頃)と寒さが和らぐ3月~4月上旬頃、ケースの中を糞だらけで放置せず、新鮮なマットで満たした状態にしていることが、幼虫を健やかに育てるカギとなるでしょう。
マットの表面に糞が見えてきたら土の下側は糞が多くエサが少なくなっているサイン。
糞を取り除いてケースの中に新しいマットをつぎ込むべき合図です。
筆者の場合、春と秋のマットを最もたくさん食べる時期には2~3週間でそのような状態になっていました。
そのときは園芸用のザルを使ってマットをふるいにかけて糞を取り除き、新しい土をつぎ込みました。
このサイクルをこまめに行ってエサが少ない状態を放置しなかった時ほど、飼育はうまくゆきました。
1つの飼育ケースの中の匹数によりますが、頻度の高い時期で2~3週間に1度くらいという感じです。
土をふるいにかけて糞だけを取り除く作業は、下の写真のような感じです。
ふるいにかけて糞を取り除く作業
取り除いた糞だけを集めたのが下の写真。
冬に入り始めると、エサの消費量が減り、土の表面に糞が見えてくる間隔が長くなる、エサの消費量が減ってきます。
やがて本格的な冬が始めると、冬眠に入り、エサをほとんど食べなくなります。
9月下旬~5月頃までは、近くのスーパーでカブトムシグッズを売っていないため、通販でマットを仕入れています。
幼虫が20匹以上もいる場合、5Lだとすぐに消費してしまうため、10Lを使うことが多いです。
これまでに幼虫飼育がとても上手くいったマットは「SANKOの育成マット」や月夜野きのこ園の「きのこMat」などです。
月夜野きのこ園のマットは、SANKO育成マットよりも細かな木片が少なく、全体的にさらさら感のある土です。
幼虫の飼育ケースを置く場所はどこがよい?
カブトムシの幼虫は、個体内に自分での体温調整機能を持たないと言われています。
そのため、飼育場所は「できるだけ温度差が少ない場所がよい」とされています。
直射日光のあたらない、暑すぎない場所がおすすめです。
秋(10~11月頃)は気温や気候が安定しているので、自宅内や物置の中といった屋内でも、ベランダなどの屋外でも、さほど大きく変わらないかと思います。
冬(12~2月頃)は温かい室内など、比較的に温度が高い場所で越冬すると、蛹化や羽化(成虫)のタイミングが早まることでしょう。
筆者は、自宅内の下駄箱の上、または、屋外の物置の中に入れて越冬していることが多かったのですが、羽化する時期の早い遅いの違いはあれ、どちらの方法でも土の手入れをしっかり行った年は、とても良い成果が出ました。
春先(3~5月頃)は日によって暑くなるので要注意です。
直射日光で飼育ケースの温度が30℃に達するような場所にケースを放置するのは避けた方がよいでしょう。
幼虫たちが1~2週間の間に、暑さで半数くらいに減ってしまった経験があります。
マットの湿り気(水分量)
飼育ケースを置く場所やケースの種類(蓋の通気性)によって、マットの湿り具合い(乾燥の程度)は変わるため、やや管理しずらい面があります。
あまり神経質になる必要はありませんが、乾燥しすぎ、逆に水分たっぷりで湿り過ぎは避けたいところ。
手で土をギュッと握ってみて、水分が湧き出るか出ないかくらいが、ちょうど良い具合と言われています。
昆虫マットと買って袋を開けたばかりのマットの状態がそれに近いです。
幼虫飼育の際、あまり手間がかからずに土の湿り具合いが良い感じに保てるのが下の写真のタイプの飼育ケース。
フタと外気の接する面積が少なめで、土の湿度をほどよく保てるため、幼虫飼育が比較的上手くゆきました。
コバエの侵入も少なめになると思います。
下の写真の右下、青いフタのケースのタイプで、幼虫飼育用に土を多めに入れているのがそれです。
1つの飼育ケースに入れる幼虫の数(頭数、匹数)
飼育を成功させる際は、1つの飼育ケースに幼虫を何匹(何頭)入れるかも重要になってきます。
それによってエサ環境が変わるためです。
参考までに、幼虫がうまく成虫に育ったときは、上の写真の右下、青いフタのケースに4~5匹前後を入れていたときす。
上の写真の右上、黒いフタのケースで2~3匹程度です。(できれば2匹)
このケースに最多で6~7匹。10匹だと過密であるように思います。
一般的には、以下のように言われています。
Lサイズの飼育ケース(上の写真の左の黒い蓋のケース)=8~10頭
Mサイズの飼育ケース(上の写真の右下の青い蓋のケース)=4~6頭
Sサイズの飼育ケース(上の写真の右上の黒い蓋のケース)=2~3頭

これまで使用した飼育ケースの中で、扱いやすさ、観察のしやすさ、ケースの頑丈さの点で良いと思ったのが、アイリスオーヤマの「飼育ランド」CYシリーズです。
他の飼育ケースは、結構簡単にヒビが入ったり、割れたりしましたが、アイリスオーヤマの「飼育ランド」CYシリーズは、強度があって一番長く使えています。
サイズはSS、S、M、L、LL、3Lと6種類。
Amazonだと、製品紹介の[詳細]欄に具体的な寸法cmが表示されています。
土の深さ
幼虫飼育では「マットの深さ」も重要です。
カブトムシは蛹になる時に縦方向に大きくスペースを使うため、10cmくらいの高さは欲しいところです。
多頭飼育の場合は大きめの飼育ケース(Lサイズ以上)が必要でしょう。
お互いがぶつかり合ったり、窮屈にならないゆったりとした環境が理想です。
カブトムシの幼虫からさなぎへ:蛹化前後の注意点
幼虫の体が黄色くなり始めたら・・・
幼虫の体が白から黄色っぽくなり、外見のしわが目立ちはじめたら、蛹(さなぎ)になり始める前のサインです。
いわゆる「前蛹」という蛹化(ようか)の前の段階で、あまりエサを食べなくなるので、マット交換も避けた方がよい時期です。
早ければ4月頃。一般的には5~6月頃。
色やしわの具合は下の写真のような感じです。
幼虫は土を固めて蛹室(ようしつ)を作りはじめます。
ケースの外側からその姿を見たときは感動的。
この時期、マットの深さを確保できなかったり、マットが濡れすぎていたり、乾きすぎて蛹室が作れないと、変形や死亡の原因などの羽化不全の原因になります。
マット交換などで土をほじくり返すのは止め、そっとしておきましょう。
蛹になる前後に幼虫を別ケース移動させることは羽化不全のリスクを高めてしまいます。
上の写真は幼虫の変体がはじまり、蛹になりかけているところ。
幼虫が蛹になるのは一晩。あっという言う間です。
朝、目覚めたら、幼虫が蛹になって外見はすっかり変わっていた・・・
運よく幼虫から蛹に変体する時間帯に見ることができたら、とても感動することでしょう!!
透明感のある白い蛹が茶色くかわってゆく様子は、本当に生命の神秘です。
上下の写真は、蛹室を作ってからの大切な時期に羽化不全を起こして成虫になれなかった例です。
カブトムシの幼虫:ペットボトル飼育も面白い
ペットボトル飼育の良さは、幼虫が蛹室作るときは壁際に作ることが多いため、蛹室内の観察できる可能性が高まることです。
ペットボトルに移す時期は蛹室を作り始める前の幼虫の体が黄色くなりはじめる前か、濃い黄色に変わりはじめた初期が最後のチャンスです。
春のエサをたくさん食べた頃にペットボトルに移してしまうのが理想的です。
下は蛹化の準備に入り、蛹室を作り始めたころの幼虫の写真です。
写真は1.5リットルの飲料ペットボトルの上をカッターで切り、上部をそのままフタとして使っているものです。
蓋の下側に2~3か所、縦方向に切り込みを入れれば、開け閉めしやすくなります。
下の写真のような感じです。
かぶと虫の幼虫:コバエ対策(補足)
虫カゴ内にコバエ(カブトムシのにおいが好き)が入り込み繁殖して、コバエだらけになってしまうことがあります。
一度、コバエが繁殖してしまってから完全に取り除くのは困難で、土全体を変える必要があります。
しかし、新しい土のときに「虫よけシート」を利用すると、コバエの侵入と繁殖をさけることができて便利です。
屋外でも屋内でも、湿気も適度に保ってくれるのがさらに良いです。
ケースの大きさに応じて切り取れる「虫よけシート」の例がこちらです。
「虫よけシート1番(マルカン)」のサイズは「52.5cm×35cm」が3枚入り。
45cmまでの特大サイズの飼育ケースでもでき、手触りは少し固めで頑丈な感じ。
「ハエピタシート(フジコン)」のサイズは「42cm×27cm」が2枚入り。
横幅37cmまでのサイズの飼育ケースまで対応し、少しソフトで手触りが良い感じです。
どちらも使いがっては変わらないですね。
カブト虫の幼虫が羽化後、地上で出てくるまで
蛹室内で蛹が成虫として変体した後、羽化した成虫が地上へ出てくるまでに数日間かかります。
羽化したばかりのカブトムシの成虫は、まだ羽がやわらかく、地上でエサを求めて活動して敵と戦える強さを持っていません。
地上に出てくるまでの数日間は、その後に生存するための個体の力をもつための期間で、準備ができてから自力で土の外へ上がってきます。
下は蛹の最終段階(羽化直前)の写真。
蛹室を土の上部に作っていたため、偶然撮影でき、撮影時以外は上に蓋をかぶせておきました。
下の写真は、蛹の殻を脱いで羽化した直後。
手作りの人工蛹室内に移した。
羽の部分が白いのは3時間くらいの間(6年間で1回だけ、この瞬間を見たくて行った)。
(手作りの人工蛹室や蛹室を移すことは羽化不全のリスクも高いので、本当はしない方がよいです)
羽化したばかりの成虫。
上の写真は、羽化したばかりで、まだ蛹の殻を被ったままの成虫。
蛹室の中にいたままの成虫。この状態で数日間、個体として外で生存してゆくための準備期間。
羽化した瞬間は白だった羽が数時間後にオレンジ色となり、さらに数時間後には黒く変色してゆきます。
本来、この段階では、成虫はまだ地中の蛹室内で体力をつけ、地上で生存するための準備段階です。
羽化後、活動的になって、ゼリー餌を食べ始まるようになるまで2週間くらいは、ずっとじっとしたままです。
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