地震や台風、豪雨による水害、異常気象による天候不良。・・・。
残念ながら、そうした天災により、せっかく楽しみにしていた旅行計画を中止にせざるをえないこともあるでしょう。
その際に気になるのが、旅行のキャンセル料(返金額)。
自然災害や航空会社のフライトキャンセルが理由なのに、取消料がかかる(返金がない)ことに納得できないケースもあるかもしれません。
この記事では、主に旅行会社のパッケージ・ツアーを例を中心に、災害等による旅行中止のキャンセルについて書いています。
以下の「4」では航空券や宿泊施設などを単独で予約している場合について、「5」では台風襲来前の対処方法について記載しています。
キャンセル料(返金有無)を問合せる前に整理しておきたいこと
ひとえに旅行のキャンセルといっても、問合先や適用されるルールはいろいろです。
問合せる前に、ざっと以下を整理しておきたいですね。
●どこで予約したか?(どこへ申し込んでいるか?)
(旅行会社、航空会社、宿泊施設、レンタカー会社等の他施設、インターネットの予約サイト)
●パッケージツアーか、航空券またはホテルだけの個別手配か?
●自然災害の場所は?(旅行先の災害か、旅行先以外(ご自身の出発地など)の災害か?)
↑↑ここが重要ですね↑↑
●旅行の開始前か、もしくは、旅行開始後の災害か?
旅行会社、航空会社、宿泊施設、その他施設。それぞれが設定しているルール(約款)があります。
基本的には、「その会社がどのように対応するか」ということになります。
しかし、それぞれの企業で細かな点での違いはあるものの、おおむねキャンセル料の考え方には共通するものがあります。
たとえば、旅行会社のケースで言えば、旅行会社が設定する取消料の規定。
それは、ほぼ全てのケースで国土交通省がモデルとして発行している「標準旅行業約款」に準じています。
国(省庁)が発行する内容ですから、特別に消費者に不利になるようなルール、逆に、企業の商業活動を妨げるようなルール設定にはなっていません。
なるべく双方の利害を両立させるような、中立的な内容に落ち着かせようとしたものになっています。
災害時の取消料についての基本的な考え方
災害時の対応についての基本的な考え方には、おおむね共通するものがあります。
少々粗い表現ですが、
「地震、台風、水害などの天災地変は、人間にはどうすることもできない不可効力。
消費者も企業も誰も悪くはない。」という立場から、設定されていると言えます。
ちなみに、ツアーにおいては、フライトキャンセル(運送・宿泊機関等の旅行サービス提供の中止)も、不可抗力の一つとして扱われます。
つまり、取り決め(約款、ルール)の背景にあるものは、
「不可効力であって企業(旅行会社、航空会社、宿泊施設など)が悪いわけではない。
けれども、それらの企業には、お客様を安全に、円滑に、ご案内する義務がありますよね?」
「安全かつ円滑に実施できない、もしくは、予定したサービスを提供できないなら、旅行者へお金を返して実施を中止するか、お客様に納得してもらえる合理性をもって、変更しましょうね?」
といったところです。
一方で、ルールはルールとして存在していますが、社会通念や人道的観点から、特例措置がもうけられているケースもあります。
ここは各社、各業界により、少なからず違いが出る部分です。(企業と消費者がモメやすいのもココ)
ルールの具体例(旅行会社のパックツアーの例)
ここでは、上記の具体例を見てみます。約款や法律が関係しているので、少し硬い内容です。
災害時に旅行を中止する場合、「お客様側によるキャンセル」と「サービスの提供側(旅行会社等)によるキャンセル」があります。
ともに約款上は、キャンセルのことを「契約の解除」という言葉で語られています。
以下は、国土交通省(観光庁)が出している一般募集ツアー(募集型企画旅行)の標準旅行業約款の抜粋です。
旅行会社の約款は、ほぼ全てと言ってよいほど、この「標準旅行業約款」に準じた内容です(※)。
(※)各社の約款は、利用者(旅行者)に不利にならない内容である限りで、国土交通省の認可を受けた上で、その会社独自の修正を加えている場合があります。
地震、台風、水害などの災害時の対応(天災地変)は約款のコア部分の一つですので、各旅行会社によってばらつきはなく共通の条項でしょう。具体的に見てみましょう。
利用者(お客様)によるキャンセル
第四章 契約の解除
(旅行者の解除権)
第十六条
旅行者は、いつでも別表第一に定める取消料を当社に支払って募集型企画旅行契約を解除することができます。
2
旅行者は、次に掲げる場合において、前項の規定にかかわらず、旅行開始前に取消料を支払うことなく募集型企画旅行契約を解除することができます。
三
天災地変、戦乱、暴動、運送・宿泊機関等の旅行サービス提供の中止、官公署の命令その他の事由が生じた場合において、旅行の安全かつ円滑な実施が不可能となり、又は不可能となるおそれが極めて大きいとき。
旅行者は、天災地変が生じた場合において、「旅行の安全かつ円滑な実施が不可能となり、又は不可能となるおそれが極めて大きいとき」には、キャンセル料を払うことなく旅行取消をできる、と書いてあります。
でも、「安全かつ円滑な実施が不可能なのは、どの場所をさすのか?それは誰が判断するのか?」という疑問は残ります。
サービスの提供側(旅行会社等)によるキャンセル
一方、パッケージツアーにおける旅行会社側の立場でみてみましょう。
(当社の解除権等-旅行開始前の解除)
第十七条
当社は、次に掲げる場合において、旅行者に理由を説明して、旅行開始前に募集型企画旅行契約を解除(旅行を中止)することがあります。
七
天災地変、戦乱、暴動、運送・宿泊機関等の旅行サービス提供の中止、官公署の命令その他の当社の関与し得ない事由が生じた場合において、契約書面に記載した旅行日程に従った旅行の安全かつ円滑な実施が不可能となり、又は不可能となるおそれが極めて大きいとき。
この場合、「安全かつ円滑な実施が不可能となるおそれが極めて大きい」と判断したときは、旅行会社側から契約を解除(=中止)を宣言することがあるということですね。
その場合、サービスの提供側(旅行会社側)の判断で中止にする形になるので、当然、お金は返金されることになります。
中止も取消もないが、内容を変更して旅行を続行する場合
そして、もう一つは、旅行中止にならないまでも、内容を変更して実施する場合です。
第三章 契約の変更
(契約内容の変更)
第十三条 当社は、天災地変、戦乱、暴動、運送・宿泊機関等の旅行サービス提供の中止、官公署の命令、当初の運行計画によらない運送サービスの提供その他の当社の関与し得ない事由が生じた場合において、旅行の安全かつ円滑な実施を図るためやむを得ないときは、旅行者にあらかじめ速やかに当該事由が関与し得ないものである理由及び当該事由との因果関係を説明して、旅行日程、旅行サービスの内容その他の募集型企画旅行契約の内容を変更することがあります。ただし、緊急の場合において、やむを得ないときは、変更後に説明します。
少し難しい書き方がされています。
簡単に言えば、「安全かつ円滑な実施が不可能、もしくは、そのおそれが大きいと判断される場合、旅行会社は、危険を回避する方法で一部を変更して実施することがあります」ということになります。
この場合、納得ゆくようで、納得がゆかない面があることでしょう。
なぜなら、変更して実施をするということは、当初申し込んだときと違う内容、もしかしたら、一番楽しみにしていた訪問地がなくなってしまう可能性もあるわけです。
それに関しては、次のような形で、旅行者(利用者、お客様)の立場が保護されています。
これは前述した(旅行者の解除権)と同じ場所での記載です。
第四章 契約の解除
(旅行者の解除権)
第十六条
旅行者は、いつでも別表第一に定める取消料を当社に支払って募集型企画旅行契約を解除することができます。
2
旅行者は、次に掲げる場合において、前項の規定にかかわらず、旅行開始前に取消料を支払うことなく募集型企画旅行契約を解除することができます。
一
当社によって契約内容が変更されたとき。ただし、その変更が別表第二上欄に掲げるもの、その他の重要なものであるときに限ります。
「別表第二上欄」というのは各社の約款に掲載されていますが、一例としてJTBの募集型企画旅行のものはこちらのページの一番下で見ることができます(どの旅行会社も同じ場所に掲載されているかと思います)。
それ以外にも、変更内容が旅行者にとって重要なものであると認められる場合は、取消料を支払うことなくキャンセルできるという意味合いですね。
航空券や宿泊施設を単独で予約している場合
航空券を単独で手配している場合
航空会社が設定するポリシー、もしくは、その航空券手配を取り扱いを行っている事業者の設定するポリシーが優先的に適用されます。
2018年9月の「北海道地震」「関西台風」の実例が参考になると思いますので、リンクを添付します。
以下のピーチ・アビエーションの実例のように、欠航が決まっていなくても払い戻しがなされるケースもあります。
2018年9月の北海道大地震に伴う、航空・旅行各社の対応状況
ピーチ・アビエーション 2018年関西空港浸水、北海道地震に関する対応
宿泊施設を単独で手配している場合
出発地の空港でのトラブル、利用航空会社の運航中止などが原因で、旅行先での取消料が発生してしまうケースもあります。
これは旅行先の宿泊施設などが通常どおりに営業している場合など、旅行先でサービスを提供できる状況では、基本的には取消料が発生すると考えた方がよいでしょう。
海外のホテルに関しても、ホテルが設定するポリシー、もしくは、そのホテル手配を取り扱いを行っている事業者の設定するポリシーが優先的に適用されます。
ただ、日本国内の宿泊施設に関しては、良心的な宿泊施設では、例外的に取消料の軽減や取消料の免除を検討してくれる可能性はゼロでありません。
その対応は宿泊施設の規模や経営状況、ポリシーにより、まちまちです。
直接、宿泊施設へ連絡して相談してみることをおすすめします。
なお、非常事態時は、多方から問い合わせが入っている可能性があり、メールでは返信がなかなかこないことも多いです。
話が複雑なので、なおさらメールの返信は来ずらいです。
急ぐ状況でもあるので、電話での直接交渉をおすすめします。
直前までどうなるかわからない台風への対処法
台風は「来る来る!」とメディアが大騒ぎしていても、途中で進路を変えて、実際にはさほど影響が出ない場合もあります。
台風は前日くらい前まで予測が難しいことも多いです。
そのため、航空会社などの運航機関は、運航中止やスケジュール変更、取消料の有無を決定するのが、比較的に直前のタイミング、早くても運航の2日前、概ね24~6時間前くらいが多いようです。
その間、なかなか電話回線もつながらず、不安な思いをするかもしれません。
台風に備えて変更手配などの動きをとる際は、タイミングが早すぎても外れることがあり、交通機関の利用日の2~3日前くらいから、ニュースや天気予報などをよくウォッチしておく必要があります。
自分の移動時間と場所に台風の直撃が確実と判断したら、台風が来る前に移動する方法も早急に検討する必要があります。
(それに合わせて宿も変える、手配する/同じ方法で対応する人たちが殺到する前に対応)
運航中止が確定してからでなければ、変更が不可の券をもっている場合、取消料の有無を含め、運航中止の後の最善なパターンについて、考えておくと良いと思います。
旅行自体を取りやめるという判断をした場合、出発日の3日前と2日前ではキャンセル料が大きく違うケースがあるので要注意です。
台風により旅行や交通機関の運行に支障が出ることが確定しない段階でのキャンセルは、残念ながら「自己都合」として扱われ、通常の取消料がかかってしまうでしょう。
まとめ(ルールと実態の違い)
上記の「ルールの具体例」のところでは、旅行会社の一般募集ツアーを例に、少し難しい話でした。
全体として、すべてのケースに完全に説明ができ、解決される表現にはなっていません。
特に「旅行の安全かつ円滑な実施が不可能となる場合、不可能となるおそれが極めて大きいとき」の具体的なラインは、基本的には各事業者にゆだねられています。
一方、災害などの場合は、旅行会社、航空会社、ホテルなどの心づかいで、イレギュラー対応していることも多くあります。
つまり、通常、ルール上ではキャンセル料が発生するけれども、利用者(旅行者)に配慮し、社会通念や人道的な観点から、好意として特例措置を設けているケースです。
一般的に、大手の会社では、社会的な影響の大きさも考慮して、寛大な対応をとる傾向があるように思われます。
中小の会社はそれに追随して、それぞれの資金事情なども踏まえて判断していることが多いと言えるのでないでしょうか?
いろんなケースがあり、一重に語れない、都度判断しているケースも多いので、予約先に問合せをして、穏便かつ納得のできる解決となることを願います。